前話からの続きです。

 

先ごろ文部科学省が小学校、中学校にスマートホンの持ちこみを認めると発表しました。

さらには、5Gの実用化も目先にみえてくるなど、誰でも年齢に関係なく簡単にインターネットなどを活用できる時代がやってきました。

ねぷた絵の世界もアナログからデジタルへ当然変化しなければならないでしょう。

早晩、ねぷたの世界の産業革命みたいなものがくると思います。



 竹森節堂先生の「ねぷた絵草稿」の本を見て、玄龍庵の塾生が良く下絵を作るとして一生懸命やっているのを目にします。

この人物をこっちにしてこれと組み合せてと思い描いても、最初はなかなか上手くいきません。

この本には節堂先生のトレース図まで掲載されて、しかも簡単そうに書かれているので、真似てねぷた絵を完成させようと思うのは仕方がありませんが、この本で所期の目的を達成することは困難です。

この本は、資料的価値の高いもので、ねぷたを描く為の技術指南本ではありません。

そもそもねぷた絵を描かない人が編集したので、肝心のトレースの手法やその後の処理をどうするかについては書かれていません。

実は書かれていないことが一番難しいことだと私は思います。

ねぷた絵を描くことができるようになるには、基礎練習を経て、まずは沢山の資料を頭の中で整理し、体系化する必要があります。

従来からのアナログ方式では多くの資料を整理し具現化することは困難なので、私は資料をデジタル化するのが一番手っ取り早いだろうと思います。

資料をデジタル化することによって(竹森先生のような卓越した技術をもった人がいないので)、パソコンを使って、竹森先生程度の技術等を簡易に具現化きるようになると考えています。

縮尺を合わせたり、ねぷた絵として紙の上に手で直接再現する非常に手間のかかる作業をパソコンで処理することが可能となるからです。

簡単に言えば、「パソコンを使ってデジタル化した資料を、誰でも自分なりに加工できる環境」を作り出すことができるのではないかということです。

 

さらには、絵の題名というか絵師がつけた題が果たして何なのか、見物する皆がわかる必要もあると考えています(これは私の強いこだわりです)。


今や国際的な夏祭りとなった青森ねぶたは、立体の人形ねぶたと華やかな踊りが主体です。


青森ねぶたには、題名を見なくともその人形が何をしているのか、その場面を把握するのにわかり易い立体化された当該の人形がそこにあります。

題材も日本的なものが多く、三国志はもとより歌舞伎・伝承の世界までを広く題材にし、比較的わかり易く親しみ深いのがその特徴の一つです。

ところが弘前ねぷたは二次元、平面の世界なので青森ねぶたのようにはいきません。


題名もわかりづらくローカルでのみ通用しています。


三国志○○の奮戦図と言っても○○が有名な場合はまだいいとしても、三国志演義のなかでも二番手三番手の人物だとすらすらと登場人物の名前と実績が出てくる人は稀です。

 

マスコミも「迫力がある、きれいだ、武者絵だ、美人画だ」位のお決まりの感想をメディアを通じて毎年毎年繰り返し伝えているだけなので、知らない人は水滸伝でも漢楚軍談でもなんでも、すべて三国志の何かだろうだろうと見ています。

おまけに、現在のねぷた絵の題材となるものの範囲が狭すぎるので手詰まり状態となり、前も書きましたが仏画がねぷたの裏面(見送り絵や袖絵部分)を飾るようになってきています。

たまにはいいのですが、あそこの団体もここの団体もとなると疑問になるし、七夕祭りに仏画仏画してもどうにもならないと思います。



さらに、もう既に顕在化していますが、少子高齢化で地元の見物客・運行者はどんどん減ってきています。


このあたりは下の昭和30年頃のねぷた見物の写真と現在を比べてもらうと一目瞭然です。

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特に運行する人は、囃子方を中心に掛け持ちが常態化している他、地元見物客も老齢化してきて活気に欠けてきており、頼みの観光客は五所川原の立ちねぶたに奪われはじめています。

 

 

最低限、観光客を増加させ祭り規模を一定に保つためには、

・ 迫力だけを追い求めない

・ ねぷた絵の題材がわかり易いこと

・ ねぷた絵の時代考証などがある程度しっかりしていること

・ 運行地区にフリーWi-Fiを導入する等、SNS等を駆使して絵の内容等を観光客に多言語で周知させる方法を確立させること


など、官民で考え実践していくことが絶対条件でないかと考えています。

特に、四番目は観光コンベンションが動かないとどうにもなりませんが。

 

絵師側は、パソコンで画像処理できるような下絵づくり、資料の体系化等に取組んで若い人にねぷた絵に取組む環境を作り出すことが求められると考えています。

私がもう30歳若かったらソフト開発等を手がけるのですが、今はそのような気力体力もありませんが、私が若い時に今のような環境がなかったのが残念に思います。

 

そのためもあって、津軽デジタル風土記のねぷた関連では、今回は見送り絵に主眼を置き、将来のねぷた絵の方向性を見極めて温故知新を目指していくことを目標としました。

10月3日から予定しているこの発表会では、大学の諸先生方が出典だけでなくその要約、元絵などを開示してまとめて頂くことになっています。

私の方は、このプロジェクトの発表会が終われば、私が所有する下絵群をデジタル化し、できれば本でも出版する形で発表していこうとも考えています。 おわり

 
団扇 李逵

今回は,水滸伝から梁山泊序列第22位、黒旋風李逵(こくせんぷうりき)の団扇です。